このサイトからダウンロードできる
PDFデータの閲覧のために必用なAcrobatReaderは以下のリンクより
無償でダウンロードできます。



このサイトからダウンロードできる
PDFデータの閲覧のために必用なAcrobatReaderは以下のリンクより
無償でダウンロードできます。



「RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語」

重役けって田舎で再挑戦

「RAILWAYS」中井貴一
(c)2010「RAILWAYS」製作委員会
 多くの男の子が一度はあこがれる電車運転士の夢を、49歳になって実現する物語。
主人公、筒井肇(中井貴一)は、エリート街道まっしぐらのサラリーマン。取締役への昇進と引換えに、工場閉鎖の実施役を引き受ける。
いわゆる会社人間で、家庭はバラバラ。妻の由紀子(高島礼子)は専業主婦から抜けだし、長年の夢だったハーブショップを開く。大学四年生の娘の倖(本仮屋ユイカ)は将来の進路を見つけられず、膨れっ面。

そんな肇に転機が訪れる。郷里の島根で一人暮らしをしている母の絹代(奈良岡朋子)が病に倒れ、一方、閉鎖される工場長の川平(遠藤憲一)が事故で亡くなる。川平は同期入社で、親友でもあった。
絹代には親孝行の一つもしていない。川平は物作りという自らの夢に掛けていたが、それに比べると自分はまだ夢に挑戦していない。
肇は島根に戻って運転士の採用試験を受けることを決意。県の東部を走るいち一ばた畑電車(通称バタデン)の運転士となる。Uターン物語といえばそれまでだが、この一時間一本、ローカルカラー豊かなバタデンが作品の一つの魅力を形づくっている。

京王電鉄の運転士養成センターでの、実物の車両を使った訓練シーンは見もの。そして肇が運転士になってからの乗客との交流が楽しい。特に泥酔した客との絡みはユーモアが溢れている。いささかご当地映画めいているが、出雲の自然風景や祭りは目に心地良い。中年になってからの自己再実現と新しい価値観の体得が作品のテーマ。

錦織良成監督 2時間10分




東京新聞2010年5月28日号(夕刊)掲載

中川洋吉・映画評論家