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「イエロー・ハンカチーフ」

愛の物語前面にリメーク



「イエロー・ハンカチーフ」
(c)2009,DODI FILM PRODUCTIONS

 山田洋次監督の名作「幸福の黄色いハンカチ」が米国作品としてリメークされた。
中年男が刑務所から出所し、ひょんなことから出会った若い男女と、アメリカ南部をオープンカーで旅するロードムービー。

若い二人は、男の過去の話の 聞き役に徹する。男はけんかで殺人を犯し、愛する妻と別れる。だが彼女を忘れられずにハガキを出す。もし会ってくれるなら、あの黄色い帆をいっぱいに張ってくれ。おれは近くまで行き、黄色い帆が張ってあるか見る。もしなければ立ち去る、と。

リメーク作品の場合、作り手は、新しいシチュエーションや異なる人間関係を持ち込みがちだが、この作品は、山田作品に描かれた人間関係を基本的に変えていない。
ただ山田作品に見られる武田鉄矢と桃井かおりの絶妙なズッコケぶりは背後に押しやり、主役の中年男を演じるウィリアム・ハート中心の展開となっている。
ウダヤン・プラサッド監督は誰にでも受け入れられる愛の物語に仕立てたといえる。平凡と言えばそれまでだが、わかりやすさを求める観客のニーズを見すえている感があり、名作よりも心にしみいるB級作品を狙ったのではないか。

主演のウィリアム・ハートの渋い演技は作品の魅力の一つ。彼は「蜘蛛女のキス」(一九八五年、ヘクトール・バベンコ監督)でゲイを怪演。カンヌ映画祭主演男優賞を獲得し、演技派として名を成した。今年の同映画祭オープニング作品「ロビン・フッド」にも出演している。

1時間36分




東京新聞2010年6月25日号(夕刊)掲載

中川洋吉・映画評論家