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東京新聞 [ 2007年12月28日掲載 ] [ 2008年1月4日 掲載 ]


「日本映画展望(1)− 世界一高い入場料」


 我が国は映画大国であるが、映画先進国ではない。
 2007年度の仮統計によれば、興行収入は2000億円を割り、入場者数も1億6400万人と前年を下回ることが確実視され、数字的には若干減少傾向を示している。
 興行収入2000億円という数字、アメリカに次ぎ、映画大国フランス、躍進著しい韓国をも上回っている。しかし、実情は、入場料値上げによる興行収入の高水準維持にある。一般料金1800円、学生料金の1500円は、どう考えても高すぎる。
 観客動員数は、ここ数年1億6000万人前後で推移し、上昇の気運が見られない。映画興行資本は、この現象に対し何らかの手を打つことを考えねばならない。
 実際に割引料金のモーニング上映の閑散とした状態は、空気を相手に映写しているようなものだ。
 実際に昼の映画館はシニア、夜は若い女性達の姿が目立つように、現在の観客動向は女性とシニア中心と言える。社会人、成人男子が少なく観客層に偏りが見られる。この映画の例でも、文化一般に関し、我が国は成人男子の存在感が希薄である。この辺りに行政側の文化的支出の乏しさの原因がありそうだ。
そこで、興行資本自身が若い世代を取り込み、その世代を育て、それにより、今まで映画館に足を運ばなかった新しい観客層の獲得を提案したい。その具体的手段として、思い切って、シニア800円、学割600円と廉価を打ち出すことも一案だ。発想を転換し、割引というカードを切り、学生、そして、シニアへ向けて観客動員増加策を打ち出しては如何だろうか。
 映画を見る環境整備のためには、現在の、日本人の映画鑑賞回数の年1.3回を、フランスの3回、韓国の3.4回と言わぬまでも、せめて2回へと増やすために、世界一高い、日本の入場料金引き下げに取組む必要がある。



(文中敬称略)
東京新聞夕刊 2007年12月28日掲載

参考文献:「生き残るフランス映画 − 振興制度と助成」 中川洋吉著
希林館  TEL : (03) 5397-8776


中川洋吉・映画評論家